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コンサート

日曜日、フジコ・ヘミングのコンサートに行ってきた。場所はみなとみらい大ホール。
今回はチェコのヤナーチェクフィルハーモニー管弦楽団との競演。
ここ数年、一年に一度はフジコのコンサートに行っている。

演奏する曲は当日まで決まっていない。フジコはいつもそう。
半年以上前にチケットを販売するからなのでしょうが。
まるでフランス料理みたく、「ショパンのこれこれ、またはベートーベンのなになに」
程度にしか事前にはわからない。

そして当日ホールの前に張り紙が。
本日は「ベートーベンピアノ協奏曲第5番『皇帝』」
!!!!!!
感動~。

私はアシュケナージが演奏したこの曲を聞いて感動して、
これが弾ける様になりたくて21歳でピアノを始めたのだった。
一番好きな曲。もう全部、覚えている。
実際弾ける様になるには、まだまだなが~い、なが~い道のりが必要だけど。

そんなわけで、フジコの皇帝をいつか聞いてみたいと思い続けてきた。
その夢がかなったので、ちょっと泣きそうになってしまった。

ところが、、、。
会場に入場したフジコの体調がとても悪そうだった。だれからみても。足取りはしっかりしているけど、なんか、具合悪そうで心配になる。しかしそんな心配を払拭する演奏が始まり、しばし陶酔。ああ、やっぱり皇帝は最高。
そして曲はピアノからオケのみにバトンタッチ。そしてフジコのピアノが入ってくるところ。
あれ?
もしかして、フジコさん、耳、聞こえなくなってしまったのではないのか?
オーケストラの演奏が聞こえているように思えない。耳を押さえている。
手に汗握る。違う音を弾いている。違うところを弾いている。
握りこぶしを作って一生懸命拍を取っているのだが、それが指揮者やオケとあっていない。
ということは、やっぱり聞こえていないのでは・・・・・?

陶酔なんて吹っ飛んで、ハンカチ握り締めて聞いていた。
もう演奏をストップするだろうか、とさえおもった。
すごいのは指揮者。フジコの異変に気がついて、オケが動揺しないように
笑顔で、「大丈夫だ、自分を信じろ」という顔をした。
そして、オケと指揮者がフジコの演奏にあわせる形で何とかつないでいるのだ。

皇帝は約45分。
第二楽章に入る前、大丈夫か?と指揮者はフジコに確認し、フジコは行く、という。

プロとしてどれだけ場数を踏んできたか分からないこんな人でも、こういうときがあるのだ。
フジコの演奏としては、信じられない演奏だった。
だけど、最後まで追行したことが、すごい。
自分の中で覚えている音だけ、拍だけで最後まで弾ききったのだ。

一体どれだけの観客が気づいていたのか、分からない。
実際、隣の女の人は寝てた。隣の夫も気づいていなかった。

多分、本当に、途中から急に聞こえなくなったんだ。。。

私たちの席はちょうど舞台の真後ろで、後ろから見る形になり、
フジコの表情も、手元も、指揮者の表情も丸見えの席だった。音響的にはいまいちの
場所だけど、こんなコンサートの見方も面白いと思える場所だった。

フジコについては、素人目にも過密スケジュールすぎるんではないか、とコンサートの案内をもらうたびに思っていた。なんとかしてあげればいいのに。もう高齢なのだから。
コンサートを開けば、チケットはいつも完売。だから次々、依頼があるのは分かる。
でも、ファンとしては数が少なくても、いい演奏を聴きたい。
最高の状態で、聞きたい。
今回のことは、残念というよりも、とても心配になってしまった。

そしてコンサート会場に潜んでいる魔物のようなものを感じて空恐ろしくなってしまった。
離陸した飛行機のごとく、聞こえないフジコを乗せた飛行機は途中で不時着することが許されないのだ。最後まで、着陸まで飛び続けるしかない。そこにプロの生き様をみたきがした。

そんな状態なのに、アンコールは起こる。
フジコは一人で、ノクターンとラカンパネラを演奏して退場した。

以前初めてフジコのソロコンサートに行ったときも、
演奏後、実は今日は耳が片方聞こえない、といっていた。
それでも一人の演奏だから、すべて指が勝手に動くままでいいのだとおもう。
だけど、ピアノ協奏曲はそうは行かない。

ファンとして、これからも活躍して欲しい。
だからこそ、体を大切にして欲しいな。
そう思って、会場を後にした。

by psapied | 2007-04-10 09:13 | 音楽
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Patisserie a piedの番外編  


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